
Store 04
「AI」の活用で、
スマートに
食品ロス対策。

揚げ物、寿司、サラダ、焼き鳥…。デリカと呼ばれる惣菜売場の商品は、お店のバックヤードで作られているものが数多くあります。さまざまな種類の惣菜がたくさん並び、食欲をそそる一方で売れ残りは廃棄に…。この食品ロス対策の切り札がAI。新しい仕組みでロスを減らす背景を、店舗のデリカマネージャーと本社の開発担当者に教えてもらいました。

イオンスタイル幕張ベイパーク
デリカマネージャー
飯久間 唯さんに聞きました。
作る数も値引き率とタイミングも。
各種データからAIが弾き出す。
- イオンリテール
- デリカの製造と販売にAIの活用が進んでいるそうですね。
- 飯久間さん
- はい。2つの種類がありまして、店内での製造数やプロセスセンター(PC)と呼ばれる惣菜製造工場への発注数を弾き出す「AIオーダー」と、商品の値引きタイミングを決める「AIカカク」になります。
- イオンリテール
- ではまずAIオーダーがどのようなものか教えてもらえますか。

- 飯久間さん
- 店内で作る惣菜などの商品を、何個・何パック作るかを過去の売上データなどから導き出すのが主な機能です。過去のこの日、何個売れたかという実績だけでなく、天候や気温、曜日の傾向なども含めてAIが製造推奨数を出します。あとはサラダのようなPC製造の商品を、在庫数をもとに売れ残りが無いよう何パック仕入れるかを計測します。
- イオンリテール
- 作りすぎも食品ロスの要因になりますからね。同じコロッケでも天気や曜日、時間帯によって売れ方が変わるのを予測してくれるのはとても便利なのでは?
- 飯久間さん
- そうですね。ただAIが推奨する製造数が材料のロットと合わないこともあるので、その場合は食材に無駄が出ないことも考えて製造しています。ここは人間が判断することも大切だと思っています。
- イオンリテール
- もう一つのAIカカクは値引きのタイミングを教えてくれる機能でしたね。

- 飯久間さん
- はい。お客さまにとってわかりやすいのは値引きシールですね。あのシールをいつ、どの割引率で付けていくかをAIカカクが判断します。これも過去の売れ筋や天候などのデータから、残っている数、時間帯を掛け合わせて何時に何%引きにするかを決めます。
- イオンリテール
- これはやはり、営業時間内に売り切る、つまり少しでも残さないようにして食品ロスを減らすことが目的なのでしょうか。
- 飯久間さん
- もちろんそうです。実際、当店ではAIカカクの導入で廃棄率が大きく下がりました。店内で作っている惣菜は売れ残ると廃棄にするのがルールですが、私たちにとっても作ったものをできるだけ捨てたくありません。その一方で、製造数の読みが少ないと売れるチャンスを逃すことになりますし、根拠のない割引も売上を落とす原因になります。AIカカクは残っている商品数からどの時間帯に何%の割引で売り切れるかを段階的に計測するので、とても便利です。
- イオンリテール
- 先ほどから見ていると、値引きシールを付けるモノ、付けないモノがあるんですね。

- 飯久間さん
- 今の時刻が17時なので、もう少し経ってから値引きをはじめる商品もあります。これは残っている数が少ないことや売れ筋具合でAIが判断していますね。
- イオンリテール
- お客さまの立場からすると、値引きシールがあるもの、割引率が高いものがありがたいですが、最後まで商品を残さず売り切るためのデータに基づいた計画であることは納得いただけるような気がします。
- 飯久間さん
- これまではスタッフの勘に頼って割引タイミングや割引率を決めていました。しかし経験の浅いスタッフだと読みきれずに判断に悩むことが多かったのです。このAIカカクのおかげで誰でも同じ基準で判断できるため、人によるバラつきがなくなり、迷いなくスムーズに業務に取り組めるようになったことも良かったです。

ITシステム部
DX推進グループ
北薗真人さんに聞きました。
めざすは食品ロスゼロ。
最新の技術を環境と働きやすさにいかしていく。
- イオンリテール
- AIオーダーとAIカカクの現場を先ほど見せてもらいました。この導入の理由を教えてもらえますか。
- 北薗さん
- 食品ロスの削減が第一の目的です。イオンリテールがめざしているのは食品ロスゼロで、この実現に向けた検討をはじめたのが2019年頃。当社に蓄積された各種のデータを活用するデータアナリティクスの分析でSDGsに貢献しようとなりました。
- イオンリテール
- AIカカクが先行して導入されたのですか?

- 北薗さん
- はい、2021年に全店導入となりました。AIオーダーは現在導入店を広げているところです。
- イオンリテール
- 店舗の方にとっては値引きの割引率とタイミングの判断が、誰でも同じようにできることも好評のようでした。AIカカクはどのような基準で設計されているのでしょうか?
- 北薗さん
- 基本は個店ごとの来店客数です。1日の人数から時間帯ごとの客数を出し、時間帯ごとの販売実績や気温、天候、セール情報などから割り出しています。商品の種類や残数によりますが、例えば唐揚げ唐王のような人気商品なら10%からスタートし、20%、30%へと時間帯によって割引率を上げていくのが基本的なルールです。
- イオンリテール
- 今後はこの仕組みをどのように進化させていきたいとお考えですか?

- 北薗さん
- 今年はAIオーダーの畜産売場での導入を予定しています。また、AIカカクは現在、在庫確認を人手に頼っていますが、今後はPOSデータと連携させてこの作業を無くしていきます。さらにバックヤードの作業として、商品情報が記載されたシール貼り用に機械音声で読み上げる計量器を導入予定。これは商品とシール情報の間違いを防ぐためのもので、安全性のさらなる向上を目的としています。最新の技術をいかしながらヒューマンエラーを減らすことも私たちの大事な業務。従業員の皆さんがより安心して仕事ができる環境づくりにも取り組んでいきます。