Store 06
自分で作って
感じる、わかる
地域の食文化。

「イオンチアーズクラブ」では各地域の400を超えるクラブがさまざまな活動を行っています。農作物の収穫をはじめ、防災学習、衣服のリサイクル活動など、多岐にわたる体験を通じて、環境や社会貢献活動に興味・関心をもち、考える力を育むことを目的としています。今回うかがったのは、イオンスタイル今治新都市とイオンスタイル今治馬越が合同で開催する麦味噌作り体験。今治市で古くから親しまれている麦味噌を、子どもたちがどのように作り、興味を広げていくのかをお届けします。
少し甘くて香ばしい。
今治の麦味噌を作ってみる体験。
今回の会場となるイオンスタイル今治新都市は、愛媛県の西部、瀬戸内海からほど近い今治市の北側に位置しています。到着すると、企画担当であるチアーズクラブコーディネーターの内海さんが迎えてくださいました。この日の内容について聞いてみると「今日は参加者全員、一人ずつ麦味噌を作ってもらいます。目的は地域の特産品である麦味噌を自分で作ってみることで、普段何気なく食している麦味噌への意識を高め、食文化の継承につなげたいと考えています」。今治の麦味噌は少し甘めで麦の香ばしさが特徴らしく、どんな風に出来上がっていくのか興味がわいてきます。

この日の“麦味噌の先生”である曽我さんが到着。曽我さんはこの地で100年以上続く味噌や醤油のメーカー(株)曽我増平商店の社長で、見ると台車には麦味噌作りに使う資料や材料がいっぱい。「子どもたちにどんな体験をしてほしいかと考えたらこんな量になりました」と笑う曽我さん。さっそく台車から荷物を下ろし、茹でた大豆、はだか麦、麹、食塩、水など、人数分用意したセットを机に並べていきます。味噌作りって樽を使う大掛かりなイメージがありますが意外とシンプルな材料なので、きっと子どもが手軽にできるように工夫してくださったんですね。

子どもたちが続々とやって来て、全員揃ったところでスタート。まず、曽我さんは原料の麦について資料を使って説明していきます。「味噌の材料である麦は湿害に弱い植物です。今治市は雨が少なく温暖な瀬戸内気候のため、昔から麦の栽培が盛んで四国内でも高い収穫量を誇ってきました」。愛媛県は現在もはだか麦の生産量トップクラスで、今治市はその生産量を支える地域のひとつ。麦を素材に使った味噌が、古くから今治市に根付いてきた理由に納得です。
さらに、「味噌はがん予防やコレステロールの抑制、整腸作用などの健康効果が高いと言われています。それに、みなさんはまだ意識することがないでしょうが、老化防止にも良いと言われているんですよ」と曽我さん。確かに最近、発酵食品が注目されていますが、お味噌はまさにその代表格。栄養価の高さから日本のスーパーフードとも言われているようで、改めてすごい調味料なんですね。
材料を入れてしっかり混ぜて。
1カ月寝かせて発酵を待つ。

いよいよ味噌作りへ。茹でた大豆の入った袋が渡され、袋ごしに指で大豆を潰していく作業からはじまります。簡単そうですが、大豆がつるんとすべってなかなか苦戦している様子。細かく潰して大豆の旨味を引き出したら、水と塩を投入。それぞれがよく混ざるように丁寧に揉み込み、麹を入れてさらになじませます。「麹は麦味噌特有の甘さを出すため、そして麦に含まれるでんぷん質を分解するために大事な材料です。頑張って混ぜてくださいね」と曽我さんに言われ、さらに力を入れて揉み込む子どもたち。

材料すべてが馴染んだら、最後にしっかりと空気を抜いて終了。とはいえ、袋の中のお味噌は薄茶色で、麹や大豆の粒が残っていて、普段見慣れているお味噌とは色も感触も違っていることにみんな不思議そうな様子。「今はみんなが知っているお味噌に見えませんよね。でも大丈夫。時間をかけることで発酵が進み、おいしい味噌に変わっていきますよ」。

最後に曽我さんへの質問タイム。「お味噌の食べ頃はいつですか?」の質問には、「あたたかい温度の方が発酵は進むので、25〜30度の部屋に置いてもらってだいたい1カ月後くらいが目安です」。「おすすめの食べ方は?」と聞かれると、「お味噌汁が定番ですが、ディップのように生野菜に付けたり、生姜焼きの醤油を味噌に変えてもコクが出ておいしいですよ」と答える曽我さん。「お味噌は地域によっていろいろな味わいがあります。麦味噌以外のお味噌も食べてみて、それぞれの違いを感じてもらえるとうれしいです」という曽我さんの言葉でこの日は終了し、子どもたちは自分で作った麦味噌を大事そうに抱えて帰っていきました。

普段、当たり前に使っている食材にも、地域ならではの特色が根づいていることを知り、経験した子どもたち。麦味噌が出来上がるまでを待ち遠しく感じる時間もまた、愛着を育む機会になるのだと感じました。

(株)曽我増平商店
曽我尚登さんと
イオンチアーズクラブ
コーディネーター
内海礼菜さんに聞きました。

地元の食品を選ぶことは、環境にやさしい。
地産地消の大切さを伝えたい。
- イオンリテール
- 曽我さんは普段からこうした子どもへの教育活動を行ってらっしゃるのですか?

- 曽我さん
- そうですね。弊社は醤油と味噌、酢の製造をしていまして、普段は醤油の普及活動として小学校を回って授業をさせてもらっています。この活動を継続しているのは、和食の文化を子どもたちに伝えたいという思いから。日本では海外の食が豊かに揃い、さらに昨今の米不足や価格高騰によって、家庭での食事も様変わりしていると感じています。このような状況だからこそ、あらためて和食の素晴らしさを知ってほしいというのが私の思いです。
- イオンリテール
- 今回はなぜテーマを麦味噌作りに設定したのですか?
- 内海さん
- 今治市の伝統食品を伝えたいと思ったことがはじまりです。麦味噌は今治市を代表する食品であり、手作りの体験も可能です。子どもたちが自分で作ってみることで、主体的に地域食を学ぶことができると考えました。
- 曽我さん
- ちょうど私も味噌で何かできないかと考えていまして、良いタイミングで内海さんにお声がけいただきました。

- イオンリテール
- この地域での麦味噌の歴史はかなり古くからのようですね。
- 曽我さん
- いつ頃からかは正確にわかりませんが、古くからお米と麦の二毛作を行ってきたことが関係しています。昔はお米を税として納めていたため、そのかたわらで作っていた麦を食べる機会が多く、麦味噌も生まれてきたとされています。温暖な気候も麦栽培を続けてこられた要因のひとつですね。
- イオンリテール
- 麦味噌は甘さと香ばしさが特徴なのですね。
- 曽我さん
- そもそも今治市の食べ物は全体的に甘口な味付けです。この甘さが今治の人にとっての慣れ親しんできた郷土の味。ここを出て県外に住むお客さまからも「麦味噌を食べたいので取り寄せたい」、「麦味噌の味で愛媛を思い出した」というお声をよくいただきます。子どもの頃から馴染んできた味が、その人にとっての忘れられないものになることを、とてもうれしく感じています。

- イオンリテール
- 今日の子どもたちがいつかそんな風になってくれるとうれしいですね。
ではチアーズクラブの活動をイオンスタイル今治新都市ではどのように継続していきたいとお考えですか?
- 内海さん
- 今回であれば麦味噌ですが、今治市の食材や食品の魅力を認知してもらうことによって、地産地消を促したいと考えています。地元の食品の消費が、運搬エネルギーを抑え、環境負荷の低減につながることもこの活動の大事なテーマです。おいしさはその人にとって好きな味。そういう「好き」が地元にあること、それを選ぶことが環境負荷低減につながることを、今後もさまざまな活動を通じて子どもたちに伝えていきたいです。



